間違いだらけの住宅選び
地震編
[まずは初めに・・・私は、東日本大震災(東北地震)と、熊本地震の時に、現地に行っています。
その時の率直な感想
東日本大震災:地震というより津波、あの規模の津波に対しては、正直、建築は無力です。
木造はコンクリートの基礎(土台)の部分しか残っていません。鉄筋コンクリートや鉄骨造でも躯体(建物本体)は残っている建物もありますが、
窓や扉は勿論、中身はカラッポ。何も残っていません。強烈な印象でした。
熊本地震:想像に反して(マスコミはセンセーショナルな所しか報道しませんので)、熊本市内の被害はそれほどでもありませんでした。
大きく報道された益城町は、ちょうど断層帯に乗っていた所で、甚大な被害がありました。
ただし、その被害状況をよく見ると、後述するように、ほとんどが、旧耐震(1981年以前)の住宅、
又は、設計配慮不足、施工ミスの住宅でした。
[耐震基準の変遷と最近の大規模地震での概要]
1950年(昭和25年):建築基準法施行(旧耐震)
1981年(昭和56年):建築基準法施行令改正(新耐震基準施行)
1995年(平成7年):阪神・淡路大震災ーー「旧耐震」と「新耐震」で住宅被害に大きな差(新耐震の有効性が立証される)
木造在来工法は地震に弱いという印象があるが、改修工事等で、壁を開口部等にしたケースや、
昔ながらの土葺き下地の瓦屋根等屋根が極端に重いケースに被害が発生している。
2000年(平成12年):「2000年基準」施行ーー接合金物補強と壁量バランスの重要性の強調
2011年(平成23年):東日本大震災ーー長周期地震動と繰り返し地震による被害(だだし、津波による被害が甚大)
2016年(平成28年):熊本地震ーー震度7以上の前震・本震の連続で、「2000年基準」の住宅にも倒壊被害が
続出(ただし、倒壊住宅は、設計の配慮不足、施工ミス等のケースが多い) [東京圏の地震の怖さ] 南海トラフ地震が50年以内に
起こる確率は90%。日本の人口が減少しているにもかかわらず、人と物の東京1極集中は止まらず、
大地震の少ない時期に発達した今の大都市が被害を増幅すると言われている。
その東京圏で南海トラフ地震が起これば最大死者32万人以上(静岡市の人口は約70万人)と想定されている。
災害に強く、持続可能で魅力的な都市へ少しずつたたんでいく「スマートシュリンク(賢い縮小)」を提唱する大学教授もいる。
・・・・・東京圏の皆さん、真剣に地方移住計画を検討しましょう。ここでPR(笑)・・・今、我々が計画を進めている
沼津市の「愛鷹ファームビレッジ(静岡県の内陸フロンティア指定地区)」に是非、見学に来てください。
[さて、いよいよ本題・・・木造在来工法(一般的な木造住宅)は地震に弱いのか?] 結論で言うと、
決してそんな事はありません。ただし、ちょっと注意が必要!!
①前述した通り旧耐震(1981年以前)の住宅は危険:耐震診断を受けて、適切な耐震補強工事をしましょう。
②できれば品確法に基づく住宅性能表示での「耐震等級3」(耐震最高ランク)にしましょう。
「耐震等級1」:建築基準法で定められた耐震性能(数百年に1度程度発生す地震に対して倒壊・崩壊等しない程度)
「耐震等級2」:耐震等級1で想定する地震の1.25倍に耐えられる程度
「耐震等級3」:耐震等級1で想定する地震の1.5倍に耐えられる程度
③建物の柱や耐力壁を平面的にバランス良く配置し、耐力壁直下率を上げる(平面的に上下階で柱や耐力壁のある位置をなるべく同じにする)
④セットバック(2階が1階より引っ込んでいる)やオーバーハング(2階が1階より出っ張っている)の地震力の伝わり方に
配慮する(上階の地震力は水平面を介して下に流れる)
⑤極端に重い家(土葺き下地の瓦屋根、ソーラーパネル、ALC板の外壁等)の荷重の考慮
⑥筋かい(スジカイ:柱と柱の間に斜めに入れる補強用の部材)の入れ方に注意する。一間(1.82m)の間に入れるのはやめて
半間(0.91m)の間に入れる。熊本地震の被災住宅では、1間筋かい施工が多数見られた(実験での結果も1間筋かいの強度
が劣る事が検証された)
⑦施工ミスに注意!! その施工ミスとは・・・柱脚金物の上下逆の取付。柱脚金物の組み合わせや選定ミス。
二つの金物が干渉して正しく取り付けられない例も。壁材や金物を留めるネジの長さが短かったり少なかったりピッチが
広かったりなどの単純ミスも。あってはならない不注意が複合して重大な被害をもたらしているケースも。
いずれにしても、平面計画の時に構造計画も熟考し、設計上の配慮不足をなくし、施工上の単純ミスや現場監理を徹底する事が重要である。